華やかで特別感のあるローストビーフ。
15年ほど前にアメリカに住んでいた頃があるのですが、牛肉のブロックは日本に比べてとても安価で、見栄えもするので、記念日やポットラックパーティーにはよく作っていました。
当時の住居に備え付けてあったオーブンの機能はとても簡素でしたので、オーブンに慣れるまでは温度管理も大変で、最初は赤々とした牛肉を入れたはずなのに真っ黒こげの炭の塊でオーブンの扉から出てくるという悲惨な始末でした。
もちろん、その炭の塊と化した哀れな牛肉は、表面のおこげを削り取って、後日シレ〜っとサンドイッチの具にして家族で美味しくいただきました。
さて、そのローストビーフ、いろいろな作り方があります。
かつての私のように、炭の塊の危険性のあるオーブンだけでなく、フライパン、炊飯器、低温調理器といくつかの調理器でより簡単に作れるのです!
ローストビーフには赤身の柔らかいお肉が適していますが、部位によって食感や味が異なります。
脂身が多いと冷めた後、固くなってしまうので滑らかな食感が楽しめなくなります。
そこで、おすすめの部位は5つです。
赤身の中に程よい脂が含まれているので、ちょうど良い柔らかさになります。
ローストビーフに最もポピュラーな部位で、初めて作るには最適です。
国産牛のランプ肉は赤身部分に程良い脂が含まれているので、ちょうど良い柔らかさになります。
こちらは輸入牛が向いており、中でもアメリカ産が最も脂が少なく、おすすめです。
アメリカ産のサーロインは脂肪が少なく、国産に比べて安価なのでおすすめです。
国産を使うと脂身が多く、冷めると固くなることがあります。
ヒレは1頭からわずかしか取れない部位で、サーロインやロースと並ぶ高級部位で、とても柔らかいのが特徴です。
冷蔵庫から出したてのお肉は4℃で、常温に戻した20℃とでは16℃も差があります。
そのため長時間の加熱が必要となり、その結果、中心部は適温でも表面は火が入りすぎて肉汁や赤みが失われてしまいます。
肉類は焼くといい香りがしますよね?これはメイラード反応によるものです。
たんぱく質が焼かれると組織が破壊され、組織液(肉汁)が出てきます。この肉汁が熱を受けてメイラード反応が起こり、褐色物質メラノイジンが生成されます。
これが味や香りに影響を与えているのです。
肉類には主にミオシン・アクチンというたんぱく質が含まれています。
まず、ミオシンは50℃以上で変性(いわゆる火が通った状態)します。ミオシンは変性すると弾力が出て咀嚼しやすくなり、旨味が出ます。
例えば、生肉のユッケ。
これは噛み切れないから細かく切ってあり、そのままでは旨味を感じにくいからごま油や卵黄で味付けされているのです。
次にアクチンは66℃以上で変性します。アクチンが変性するとお肉の水分が抜けて変色し、固くパサパサになってしまいます。
ローストビーフの中心部がピンク色なのは、アクチンが変性していないからです。
なので、50~66℃の範囲内で調理すると、ミオシンだけが変性しアクチンは変性しないので、柔らかく旨味のある理想的な火入れとなります。
・レアなら54℃
・ミディアムレアなら57℃
・ミディアムなら60℃
しかし、 肉類には腸管出血性大腸菌やカンピロバクターのような細菌やウイルス、寄生虫がついている可能性があり、食中毒を防ぐためには肉類は充分に加熱する必要があります。
厚生労働省は肉の食中毒防止の条件として、肉の中心部を75℃で少なくとも1分間という目安を示しています。
その条件と同等とするには、70℃では3分、65℃では15分、さらに63℃では30分、計算上は58℃だと126分ということになります。
以上のことから、私がおすすめする最も簡単かつ安全に、柔らかくて美味しいローストビーフを作るのは低温調理器による真空調理です。
下準備した牛肉をパックに入れてお湯に入れるだけ。
低温調理器は、お鍋などに水を入れ、時間と温度をセットすると、温めた水を循環させ温度を一定に保つ機能があります。
いたって簡単にしっとりジューシーなお肉料理ができるのです!
以上のちょっと面倒くさい科学的な理論をふまえた上でご参考までにレシピをひとつ。
<材料>
牛モモ肉(うちもも)約1㎏
塩10g
黒こしょう適量
にんにく2片
玉ねぎ(スライス)100g
赤ワイン200㏄
<作り方>
如何でしたか?
デパ地下などに並んでいる美味しいローストビーフが、お家でも簡単に食卓に並べられますよ!
国産和牛は、柔らかく脂がサラサラとして食べやすい、大喜屋のお肉がオススメです。